「高品質・高機能・低価格」を支える品質へのこだわり、プラッツの攻めの品質管理とは。

会社名: PLATZ VIETNAM CO.,LTD

事業内容:在宅介護用ベッド製造

利用サービス:kintone on cybozu.com

利用用途:不具合情報管理、製造日誌など

製造部長 谷添 慶太郎氏

PLATZ VIETNAM CO.,LTD (以下プラッツベトナム)は、日本の在宅介護用ベッドシェア2位のメーカー株式会社プラッツ(以下プラッツ)の製造拠点だ。プラッツの介護用ベッドの特徴はお手軽なのに高品質であること。その品質へのこだわりについて谷添氏に話をきいた。

お手頃価格なのに高品質。「高品質高機能低価格」

介護用ベッドメーカー大手であるプラッツが設立されたのは1992年。最大手の介護用ベッドメーカーが日本国内で圧倒的シェアを握る状態の中での立ち上げだった。当時の介護用ベッドは非常に高額であり「これでは子や孫がお年寄りに買ってあげられる金額ではない。 せめて10万円位にできないか?」という創業者の想いから、当時としては破格の99,800円でPKB-3シリーズをリリースし、大きな反響を受けた。その後も「一生懸命と高品質・高機能・低価格」をモットーに順調に業績を伸ばし、現在では日本の在宅介護ベッド市場の30%程度のシェアを得るまでになった。今ではメイン工場であるベトナムの生産量を増大させる計画がでているほどだ。

なぜ高品質を実現できるのか。

低価格を実現するために、生産は海外の工場に委託した。
「"高機能"というのは生産段階の中の"設計"できまります。そのため設計部分は日本国内で行っています。"高品質"というのは生産段階で改善していく課題です。問題は日々絶対に発生するものなので、それを一つずつきちっとした形でつぶしていくことが品質を高める上で重要な点になります。」

高品質を担保するために プラッツ が行っているのは全数検査だ。製造委託をしている海外の工場にプラッツの検査員を派遣し、全数検査を行う。一般のメーカーで通常を行われている、ある一定の割合でテストを行う抜取検査に比べ時間もコストもかかるが、品質の維持には最適だ。全数検査をすることで"高品質"を担保し日本で設計することで"高機能"な製品を開発し生産は海外に委託することで"低価格"を実現する。これがプラッツ躍進の秘訣だ。

なぜ全数検査にこだわるのか。

プラッツの介護用ベッドの特徴の一つは、モジュール型で生産されていることだ。上位機種である「ラフィオ」は「ベースフレーム」「センターフレーム」などの6つのモジュールから構成されている。

モジュール化により、特定の部品が故障した場合でも対象モジュールのみを交換することで対応できる。顧客にとっては経済的なメリットが大きい。しかし、メーカー側からするとこれが大変なのだ。たとえば数年前に購入されたベッド一式に、3年前に購入された部品、最新の部品、それぞれを組み合わせても問題なく利用できなくてはいけないということだ。一つでも正常に組み合わせができないと、納品したほかのベッドの信頼も揺らぐ。全数検査による高品質はプラッツの事業モデルをささえる経営戦略だ。

攻めの品質管理を実現するためのベトナム工場

しかし、生産台数が伸びるにつれて外部委託するが故の問題も明確になった。「今までは生産を外部に委託していたことから、製品を市場に出した後の不具合にしか対策が立てられませんでした。また、自社工場ではない分、弊社の希望する対応に優先順位をあげて取り組んでもらいづらい状況でもありました。そのため自社の組み立て工場をもつことにしたのです。
それが プラッツベトナム です。これにより、市場に出荷する前の、工場内で発生する不具合への対策が取れるようになりました。攻めの品質管理ですね。結果として、市場クレームが月間で0件の月もでてきました。大きな成果です。」

サイレンはラインストップの合図。集まって問題点を確認する。

管理に限界を感じていた不良品管理

「工場でよく言われる『整理整頓』というのはベトナムに限らずなかなか難しいのです。整理整頓のために『棚を買う』という解決策がよく出てきますが、棚を増やしてもルールが決まっていないと物を入れるだけになってしまう。整理整頓はできていないのです。システムや設備も同じだと思っています。“こういうシステムを買いたい”、”ああいう設備を買いたい”という話は出るのですが、システム・設備は導入した後のメンテナンスも考えないといけません。そのため、まずは手作業でやってみて、そろそろ限界かな、と思ったらシステムを導入したほうが成長すると思うのです。そのため、不良品管理についてもまずは手書きの管理から始めました。」「我々の工場は全行程にカメラを設置しているので、手書きの製造日誌から製造日時を日単位で追跡し、その日の動画をみて部品を正常に付けているかどうかなどを確認し、問題点を改善していくのです。しかし、日本からの問い合わせも非常に多く、その都度手書きの製造日誌を倉庫から持ってくるのは大変な手間になっていました。また、手書きなので集計自体も困難です。”そろそろ限界かな”と思ったところに kintone の案内を受けたんです。凄いタイミングでしたよ。速攻で飛びつきましたからね (笑)。」

写真で一目瞭然の進捗管理が可能に

プラッツベトナム では主に「不具合情報管理」と「製造日誌」で kintone を活用している。それぞれの利用方法をみてみよう。

不具合情報管理

【kintone 導入前】以下のような流れで品質管理を行っていた。

1.工場内で不良品が発生した場合、不良品の写真をデジカメで撮影する。

2.事務所にもどって帳票を作成する。

3.不良品の帳票に合わせて、不良品一覧を作成する。

4.不良品の対応進捗を都度記載する。

 「一枚の帳票に不良個所・発生したライン等の情報をまとめ、それとは別に一覧も作成しないといけません。それに対応進捗も合わせて一つずつ行っていました。進捗側の修正を忘れてしまうと、対応が漏れて行ってしまう。修正するのも、帳票と一覧をリンクさせなければいけない。すごく大変な作業を行っていました。」

「kintone を導入してから、写真をとって kintone に張り付けることで自動的に一覧ができますし、進捗管理もできるようになりました。製造ラインの中で写真が撮れるというのは本当に便利ですね。この報告用にタブレットを用意して、ラインごとに配布しました。ラインのメンバーは電子系が好きなので飛びつきましたね(笑)」

【kintone導入後】

「帳票を作る時間がほぼなくなったので、その分業務改善はできました。

ただ、それ以上に大きい成果は報告が上がりやすくなったことなのです。
製造ラインの人は書類を作ることを嫌がるので、報告をするために書類を自分が作らないといけないと思うと報告しなくなるんですよ。今は、1週間で70件以上の報告が上がってくるようになりました。以前はそもそも正確な情報が把握できていなかったのでそれだけでも大きな成果です。」

不適合品発生報告(一覧)

不適合品発生報告(詳細)

製造日誌

「毎日、各製造ラインでの製造計画と実績を入力するようにしています。100%がでていると標準時間通りに生産できているので『作業者はちゃんとやっている』と言えます。こうやってラインごとの不具合が見えると、生産効率が落ちている原因を特定できるようになります。例えば、作業者の責任ではなくて部品の不具合が多いのであれば、部品の品質向上に注力しよう。というように工場側でも本社側でも共通認識をもてるようになっています。」

製造能率(週単位)の見える化

製造日報

朝礼では前日の製造日誌をみながら問題点・注意点の確認を行う。

kintoneポータル画面に製造データをグラフで表示

今月の目標生産数と現状の生産数がメンバーに見えてくればより効率的な生産が可能になると、谷添氏は語る。
「こちらのスタッフに任せると、進捗報告がないため、ふたを開けてみると”生産が間に合わない。”なんてことがよく発生します。それであれば進捗を確認できるようにして、原因を特定できるようにすることで計画通りに生産が行いやすくなると考えています。」例えば中日のタイミングで進捗を確認して、間に合わない見込みであれば残業や休日出勤を予め計画するなどの対策が可能となる。「現場のメンバーは毎日一生懸命作ってるんですよね。ただ、最終的にあとどれだけつくらないといけないかが分からない状況なんです。土曜日も日曜日も出勤して一生懸命つくったのに、上司からは”今月は生産計画を達成できませんでした”というような話になるとがっかりしちゃうじゃないですか。
今後はオーダーに対する生産進捗の見える化に取り組んでいく予定だ。

今後の展望

「在宅介護ベッドの業界では日本国内ではシェア第2位の位置にいますが、去年よりP300という病院用のベッドを販売し病院用のベッド業界にも参入しました。今後も、病院用ベッド関連商品の拡充をはかっていきます。また、日本以外の市場にも今後は積極的に展開していきます。現時点では日本以外の売上は数%しかありませんが、既に韓国、中国、香港、台湾、タイ、ベトナム、インドネシアへは出荷しており、中国には現地法人の上海支店を立上げ、積極的な営業活動を行っていきます。」プラッツの介護用ベッドが攻めの品質管理に支えられて世界中に広まっていく。

お年寄りへの思いやりをのせて。

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